2008年も間もなく終わりですね。今年はどんな年でしたか?世界各国で経済の問題は本当に深刻になってしまい、来年も心配が続きそうですね。政治はタイなど混乱している国もありますが、アメリカではオバマ次期大統領に期待がもてそうで、うらやましい限りです。その一方で、日本の政治は望み無しです。今年も日本の首相はコロコロ変わって、この国にリーダーはもういないのでしょうか?
9月1日に前首相の福田さんが辞任しました。その辞任会見の際、記者からの最後のコメントに対して、福田さんが発した言葉がとても話題になりました。
記者:福田総理の会見は(いつも) 国民には他人事のように聞こえます。この辞任会見に対しても、同じ印象を持っています。
福田:
私は自分自身を客観的に見ることができるんです。あなたとは違うんです。
この「んです」の使い方を説明するのは実に難しい。日本人は「んです」を使う場面を感覚的にわかっていますが、理論的にこれは解説できない。ただ、福田さんのこのコメントを聞いた時、彼は怒っているんだな、彼は記者に何かを訴えたいんだな、という印象を日本人はみんな感じたはずです。
では、簡単な文で「んです」を見てみましょう。
①レストランで初めて見る食べ物が出てきました。
これは何ですか? 【解説: 話し手はこの食べ物の名前や材料を知りたい。】
②とつぜん 机の上に離婚届が置いてあります。
これは何なんですか?! 【解説: 話し手はこの状況についての説明や理由が知りたい。相手に対して、強く聞いている。】
②では相手のした事を非難していますが、①の状況で相手を責めるような形で質問をする必要はありません。
③、②の理由を聞きたい場合、
どうして こんなひどい事をするんですか?! 【解説: ②と同じ。「どうして こんな事をしますか?」では、話し手の感情や質問の強さが表わされていないし、ロボットが話しているように機械的に聞こえる。】
④、③の質問に答える場合、
私はあなたを愛していないんです。離婚がしたいんです。 【解説: 話し手は理由や説明を述べながら、自分の感情を相手にぶつけている。】
それで、福田さんのコメントは④に似ていると思います。「私は~できる
んです」や「私は違う
んです」と言って、その事を相手に知ってもらいたいと冷静に訴える福田さんの感情が読み取れます。しかも、コメントが「私はあなたと違うから、あなたができない事を私はできる」という内容ですから、「いやみ」たっぷりという感じも受けます。
しかし、「んです」は必ずしも、話し手の怒りや強い感情を表す訳ではありません。場面によって、そうなるだけです。ニュートラルな感情、また嬉しい気持ちがある時にも、「んです」は使えます。
例えば、⑤友だちに今、何をしているか聞く場合、
今、何をしているんですか?(=しているの?) 【解説: 友だちからの説明を求めていますが、②と③のような感情はありません。ニュートラル】
⑥自分の家の前で、あやしい人が家に入ろうとしている。
そこで、何をしているんですか?! 【解説: ②③と同じ。】
⑦友だちが誕生日のサプライズパーティーを開いてくれた。
これは何なの?!(=何なんですか) だれが準備してくれたの?!(=くれたんですか) 【解説: 理由や説明を求めながら、驚きや喜びを表すこともできます。】
このように、自分の気持ちを強調したい時に、「んです」を使うと考えても良いかもしれません。もちろん、話の内容から話し手の気持ちは想像できますが、それに加えて、話し方やトーンによって、感情の差を表しています。ただ、「んです」は話し言葉ですから、(先ほども書きましたが、)感覚的に使い方を身に付けているだけなので、この私の説明も外国人にとっては不十分かもしれません。ごめんなさいね。