彼は言語を学ぶことにおいて驚嘆(きょうたん)すべき才能を持っており、ごく短期間に大名(だいみょう)とも喋れ、町人とも喋れ、しかも候文(そうろうぶん)を読み書きできるという能力を身につけた。(*1)
「大名」とはある程度以上のさむらいのことで、「町人」とは商業をしている人たちのことです。さむらいと町人はちがう日本語を使っていたそうです。「候文」とは昔の敬語のようなものです。つまり、アーネスト・サトーは複数のタイプの日本語ができて、しかも現代以上に漢字の多い日本語を理解できたのですね。
以前、私はこのサトーさんをイギリス人と日本人のハーフだと思っていました。だから、彼は日本語がぺらぺらなんだと思っていたんです。でも、彼は100%のイギリス人、Ernest Satow だったんです!ちなみに、彼は語学能力だけでなく、外交能力も天才的で、江戸末期の大混乱の日本をよく観察し、当時の日本の政治に大きな影響を与えました。
外国語の勉強はいつの時代もおもしろくて、難しいと思います。でも、昔と比べると、現代はもっと多くの学習方法があって、恵まれていますよね。昔の人たちを見習って、私たちもがんばりましょうね。
*1 『世に棲む日日(三)』 司馬遼太郎、文芸春秋、2003年